· 

森洋子「猫の愛読書」銀座松屋デザインギャラリーにて開催

 森洋子の「猫の愛読書」は、気ままに流れる猫時間の話。

舞台は昭和30年代後半から40年代初めの頃。はらっぱの草の中に、子どもたちの頭が見え隠れし、満天の星空の下、路地裏には鬼も潜んでいた。そんな様子を猫は瓦屋根の上から眺めていた。

 森洋子はそんな猫たちの暮らす時間に出向いては、それを絵にする。まるで撮ってきた写真を現像するように、鉛筆で画像として浮き上がらせる。その途中、古い写真のような懐かしさだけでなく、匂いや湿気を感じ、時空の隙間から別の世界に入り込んだ感覚になる。

 この現像過程で、森は様々なプリント用紙を選ぶ。A1、B4、短冊、カルタ。

 それらをさらに1コマ絵本、3コマ絵本、文庫本、蛇腹折り本と、本にしていくことで別の形の作品となっていく。

 今回の展覧会では「人間カルテ」を出版、短冊の蛇腹折り本「のぞき月」は誰もやらないような手作りの本を試作品として展示してある。

 売り場では額装のカルタ絵と新刊本「人間カルテ」、これまでの森洋子の本を販売コーナーもあります。

 まだまだコロナが収束しそうにない東京での展示ですが、お近くに来たついでにお寄りください。